船井総研 温浴ビジネスチームが日々のコンサルティング活動から得られた情報やノウハウをレポート形式でまとめています。本来、セミナー(有料)などにご参加頂いた方にだけお伝えしている内容ですが、ホームページに来てくださった方に特別に公開しております。どうぞご活用下さい。 株式会社船井総合研究所 http://www.u271.com/
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船井総研 温浴ビジネスチーム
〜特別レポート〜
公共温浴施設活性化への提案
公的資金導入ゆえに最大限の効果を目指すべき
ふるさと創生以来の公共温浴施設開発ラッシュの背景
 ふるさと創生資金によって地方自治体の温泉掘削、そして公共温浴施設の建設計画が相次いだ八八年度以来の高水準で、公共温浴施設のオープンラッシュが続いている。

 県によっては「一市町村につき一温浴施設」に近い状況になるところも出てきており、第二次温泉ブームといってもよい勢いである。先行オープンした施設が年間数万人から数十万人の日帰り客を集め、地域活性化に効果を発揮していることから、「隣町が温泉で成功しているなら、我が地域でも」となっているようだ。平成十一年一月から平成十二年三月までに新設された第三セクターは二〇八法人であり、そのうち温浴施設が三三法人と業務種別では最多となっている(平成十二年十二月自治省報道発表資料)。

 もうひとつの要因は温泉掘削技術の進歩である。昔は「温泉を掘り当てる」と言っても当たる確率は低かったので山師的に見られがちであったが、今では宇宙探査技術や石油ボーリング技術を駆使し、的中率抜群で温泉が出るようになった。「一億円程度の掘削費用さえ負担すれば温泉を持つことができる」という認識が広がっていることも、相次ぐ公共温浴施設開発ラッシュの背景にある。

公共温浴施設の多くは運営赤字で悩んでいる
 近年の"健康""癒し"志向の高まりによって、温浴市場規模そのものが拡大しているとはいえ、相次ぐ温浴施設のオープンは、地域によっては施設間の競合を熾烈なものとしつつある。また、民間のスーパー銭湯をはじめとする温浴施設が必要商圏人口として少なくとも一〇万人以上を見込んで開発されるのに対し、近年急増している公共温浴施設のすべてがその要件を満たしているとは考えにくい。むしろマーケットが希薄で民間の温浴施設が出店しにくい地域だからこそ公共温浴施設として開発されるというケースも多い。結果的に集客不振に陥る施設も急増中と言ってよい。

 経営不振の第三セクターが社会問題化しており、なかでも観光・レジャー型の第三セクターの赤字が顕著であることが指摘されているが、温浴施設もその例外ではないだろう。

 私ども船井総研「温浴ビジネスチーム」では、この二年間で温浴施設を対象とした経営セミナーを一二回開催し、延べ五〇〇人以上の温浴施設経営者、経営幹部の方々にご参加いただいた。うち二割程度が公共温浴施設の支配人や幹部の方々であったが、そういった方々とお話しすると、意欲的にサービスの改善や従業員のレベルアップに取り組みたいという健全経営の施設はごく一部であり、多くは競合が激化、マーケットが希薄、高コスト構造等の要因によって、年間の運営赤字が何千万円というご相談か、公益事業特有の経営しづらさに関するご相談というのが実態であった。

公共温浴施設の経営課題(支配人の悩み)
   1. 運営赤字が出ている
   2. 現場の裁量が小さく柔軟な経営ができない
   3. 社長が実質の経営にタッチしていない
   4. 競合激化、将来不安等
   5. 運営のモチベーションが持てない
   6. 公益性と収益性の両立が困難
   7. 広告宣伝費の理解が得られにくい
   8. 具体的運営の方法がわからない(職員の出向)
   9. 運営や収益性に配慮した施設でない
  10. ハードの変更・改善が困難

 何億円という投資をして運営赤字が年間数千万円となると、民間の事業であればとうに経営破綻であるから、事態は深刻である。しかし、ここで私どもが売上アップ、利益アップのアドバイスをしただけでは支配人の表情は晴れない。

温浴施設を開発した本来の目的とは何か
 そもそも、公共温浴施設を開発した目的は何であろうか。おそらく多くは「地域活性化」であろう。さらに言えば住民福祉、観光振興、地場産業育成、雇用創出…といった目的であったと思われる。であるとしたら、もともと施設単体での運営収支を合わせることが事業目的ではなかったはずである。むしろ本来の目的である「地域活性化」に対してどのように効果が出ているかが重要であり、効果が出ているのであれば健全な支出として理解するべきである。純粋に民間の法人(株式会社・有限会社)であれば、当然収益性が企業目的の重要な部分を占めるが、公益性と収益性の双方を目指す第三セクターであれば、公益性への貢献も評価しなければならない。これは公民館や図書館の運営赤字を誰も問題にしないのと同じことである。あえて第三セクターにするのは利用者の満足を追及するサービス業としてのウェイトが大きいためであり、その満足によって事業が支えられているという経営姿勢をつくるためではなかったのだろうか。

 このように考えると、問題は効果をどう評価するかである。単体の営業収支だけではなく、地域全体での住民福祉、観光振興、地場産業育成、雇用創出といった視点でどれだけ地域活性化の効果があったのかを測定するルールを確立することであり、その効果を収支に換算すれば良い。つまり、地域の他の事業との複合運営として合算することなどが考えられる。その意味で、近年三セク統合の動きがあることは歓迎すべきことであろう。新潟県某村に成功事例といわれる第三セクターがあるが、ここでは温浴施設だけでなく、村内の物産館等を複合的に運営している。結果的に人材や資金、施設の効率的運用を図ることができており、トータルでも黒字を計上している。地域全体での活性化という考え方は、周囲の理解と現場のモチベーション維持のためには重要なことである。このような視点を持たずに単体の赤字黒字だけを議論することは意味をなさないのではないだろうか。

 しばしば経費圧縮のために人員削減を行うという話を聞くが、これは地域の雇用創出には逆行する施策である。また人員削減は必ずサービス品質の低下につながり、結果として地域の評判をも落としかねない。これでは本末転倒と言わざるを得ない。運営委託の議論もあるが、民間企業の事業目的と本来の事業目的を両立させることは難しい。運営受託会社の理解と賛同が充分に得られるのか、長期的に運営内容のコントロールは可能なのか、「地域活性化」のために本当に意味のある委託なのかをよく考慮する必要があろう。資金が潤沢に回っている時は誰も問題にしないが、現実に赤字となった時や再投資が必要となった時に、自治体と運営会社の責任範囲が曖昧で改善対策が遅々として進まない、といったケースも出てきている。これらの問題は、表面的な営業収支のみを論点としてしまうために起きているとは言えないだろうか。

「民業圧迫」の批判に対し、公共温浴施設が果たす役割は
 集客施設である以上、民間の温浴施設との間に競合関係が生じることは、地域によっては避けて通れない問題となるが、ここで民間施設に対抗して集客合戦をし、黒字を追求することが本来の公共温浴施設の役割ではなかったはずである。しかし今のところ「公的資金で豪華な施設をつくり、安価な料金設定で民間施設の経営を圧迫している」と批判があるということは残念ながら否定できない。

 確かに温浴施設の存在は、住民の交流、福祉、健康づくり、観光振興…等など、様々な効果をもたらすものであり、地域活性化のためには非常に有望な施策であると言えるが、もし民間の温浴施設が存在し、前述のような地域活性化効果を充分に発揮しているのであれば、公共温浴施設の存在意義を別のところに求めなくてはならない。例えば民間施設が観光型であれば、公共温浴施設は地元住民対象に徹する、逆であれば観光集客に徹するというようにターゲットによる棲み分けを図ることや、民間施設ではコスト的に合わないような福祉サービスを行うなどである。このような考え方に基づいて設計され、運営計画が練られた温浴施設であれば、その存在に理解が得られるのではないかと考える。

 全国の温浴施設の方々との共同経営研究会の場で、ある第三セクター温浴施設の支配人が「公共温浴施設は、民間施設に比べてお客様のクレームが百倍はある」と話されていたのが印象的であった。それだけ民間施設とは違う利用者の期待があるということであり、その中にこそ民営とは異なる公共温浴施設の存在意義が隠されているのではないだろうか。

 福岡県某町の公共温浴施設では、プールゾーンにおける健康プログラム利用者の体重変化等をグラフで表示し、住民の健康づくりへの貢献をアピールすることや、地元のサークルやまちづくり団体への交流場所の提供、地元文化活動を発表する機会の提供、売店や飲食において地場産業との積極的な連携、というように徹底的に「地域貢献」に取り組んでいる。また広島県某町の観光型温浴施設では直接雇用からイベント開催まで含めて住民の三分の一が何らかの形で運営に関与している。このように民間温浴施設ではできないような公益性への貢献が明確であれば、「民業圧迫」「赤字三セク」といった批判にはならないはずである。

活性化していくための手法
 ここまで、公共温浴施設の活性化を考える上で、「地域活性化効果の捉え方」「役割の明確化」が重要であることを述べてきた。この視点が欠落したまま営業収支のみを問題にすることは避けなければならない。

 しかし一方で赤字経営が続けば現場のモチベーションは低下し、追加投資もままならず、巨額赤字が累積すれば地域の財政を圧迫し、存続が困難となることも事実である。健全にサービスレベルの向上や運営の効率化を図り、収益性を追求する姿勢は失ってはならない。そのために第三セクターという、民間の人材や経営ノウハウを活用できる体制があるのではないか。

 私どもが民間温浴施設の経営コンサルティングに取り組み、業績向上を図ってきた経験から言えば、多くの公共温浴施設は収入アップやコストダウンによる利益創造の機会を逃してしまっているケースが多々あるように感じられる。その最大の要因は「ソフトの不在」である。特に計画段階でマーケティングや運営計画がほとんど検討されないまま実施設計完了まで進んでしまうケースでは、失敗するために開業するようなものである。

 例えば、地域のマーケットはどのくらいの量と質であり、競合施設も考慮した時いくらの売上確保が可能か、そして料金をいくらに設定するべきなのかが決まってはじめて年間集客人数の推定が可能となる。その集客人数に対してシーズン変動や平日休日の集客バランス、滞留時間を考慮してようやく館内の最大収容人数を決めることができる。脱衣室の規模は、さらにロッカーのグレードの検討や、再入浴可能なシステムなのか等が決まって初めて算出することができるのである。こういったプロセスを踏まずに総事業費や敷地面積からのアプローチのみで規模設定すれば、適正な規模になる方が不思議である。不適正な規模設定であれば、必ず過剰設備で無駄なコストが発生するか、規模不足でチャンスロスを起こすかである。

 価格設定についても同様のことが言える。地域の公共温浴施設同士が横並びで同一価格設定となっている場合が多いが、本来価格は、お客様に提供している施設やサービスのグレードから設定されるべきである。「地域住民へのサービス」という曖昧な理由から施設内容とバランスのとれない安価な価格設定にしたために、集客しているのに利益が残らず、民間温浴施設からは「不当に安価な価格設定で民業圧迫」と批判されてしまう、ということになる。

 オープン後もしかりである。経営現場への理解が得られず、販促費が確保できない、看板が出せない、設計事務所が美観にうるさく販促POPすら掲示できない、結果として業績を改善できない…という具合である。立派な建築物だけで事業が完結するなら、第三セクターにする必要性はないだろう。

 地域活性化や黒字経営などで成功しているといわれる公共温浴施設に共通するのは、間違いなく、より民間企業に近い経営体質を獲得していることである。特に、社長に企業トップとしてのリーダーシップがある、あるいは民間企業出身の支配人に大きな裁量権が与えられているといったトップマネジメントの問題が大きい。そのような経営体質によって、柔軟でスピーディな経営が行われれば、多くの公共温浴施設は活性化の余地を大いに持っており、赤字問題は解決できるものと考えている。私どものコンサルティング実績では、船井流即時業績向上法(図にあるソフト関連の戦闘レベルの活性化ノウハウ)だけで、間違いなく業績は改善している。公共温浴施設であっても、そういったことに柔軟に取り組める経営体質さえ獲得すれば収支改善は充分に可能なのである。

 収益性のみを追求することが公共温浴施設の本来の役割ではないとは言え、投下資本や経営資源を最大限に活用することは民間企業ならずとも重要なことである。むしろ公的資金を使っているからこそ、最大限の効果を目指さなければならないのではないだろうか。
株式会社船井総合研究所 温浴ビジネスチーム
※この文章は月刊レジャー産業資料2001年2月号に掲載された原稿に若干の加筆・修正を加えたものです。

 
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